「エアコンをつけるほどでもないかな」「窓を開けているし大丈夫」。
そんな感覚で過ごしているマンションのお部屋、実は戸建て以上に熱中症リスクが高いことをご存じでしょうか。
そんな感覚で過ごしているマンションのお部屋、実は戸建て以上に熱中症リスクが高いことをご存じでしょうか。
コンクリートの躯体、高い気密性、最上階や南向きの日射負荷。
マンションには戸建てにはない特有の暑さ要因があり、夜になっても室温がなかなか下がりません。
マンションには戸建てにはない特有の暑さ要因があり、夜になっても室温がなかなか下がりません。
結論からお伝えすると、マンションの室内熱中症を防ぐ鍵は「室温28℃・湿度70%以下を保つこと」と「7つの実践対策を組み合わせること」です。
この記事では、住宅の現場に長く関わってきた立場から、マンションで暮らす方に向けた熱中症対策を整理してお伝えします。
マンションで熱中症が起きる本当の理由

マンションの室内で熱中症が起きやすいのは、決して「エアコンをケチっているから」だけではありません。
建物の構造そのものが熱をため込みやすいという、住まいの特性が関係しています。
建物の構造そのものが熱をため込みやすいという、住まいの特性が関係しています。
まずは全体像として、この記事でお伝えする対策を先にまとめます。
- 室温は28℃以下、湿度は70%以下を目安に保つ
- WBGT(暑さ指数)が28を超えたらエアコン稼働を基本にする
- 窓の遮熱・遮光・断熱で「熱を入れない工夫」を優先する
- サーキュレーターと組み合わせて空気を循環させる
- 夜間の外気温が下がる時間帯だけ短時間の通風を行う
- 高齢のご家族には「見える化」できる室温計・湿度計を設置する
- 自治体のエアコン購入補助制度も情報として押さえておく
ここから、なぜこの対策が必要なのかを一つずつ紐解いていきましょう。
マンション特有の3つの熱中症リスク

「同じ地域なのに、マンションの方が夜も暑い気がする」。
そう感じたことがある方は、決して気のせいではありません。マンションには次の3つの構造的リスクがあります。
そう感じたことがある方は、決して気のせいではありません。マンションには次の3つの構造的リスクがあります。
①コンクリート躯体の蓄熱
マンションの壁・床・天井は、鉄筋コンクリート(RC造)でできています。
コンクリートは熱を吸収してため込みやすい素材で、日中に温められると、夜になってもじわじわと室内に熱を放出し続けます。
コンクリートは熱を吸収してため込みやすい素材で、日中に温められると、夜になってもじわじわと室内に熱を放出し続けます。
木造戸建てが日没後に比較的早く冷えるのに対し、マンションは深夜になっても室温が下がりにくいのは、この蓄熱性能の裏返しなのです。
気象庁のデータでも、都市部の熱帯夜(最低気温25℃以上)は年々増加傾向にあります。
気象庁のデータでも、都市部の熱帯夜(最低気温25℃以上)は年々増加傾向にあります。
②高い気密性が「熱の逃げ場」を奪う
2020年前後に建てられたマンションは、省エネ性能を高めるために気密性が高められています。
冬は暖房の熱を逃がしにくい反面、夏は一度こもった熱がなかなか抜けないという副作用があります。
冬は暖房の熱を逃がしにくい反面、夏は一度こもった熱がなかなか抜けないという副作用があります。
「窓を全開にしても風が通らない」と感じる間取りも多く、換気だけで室温を下げるのは現実的ではありません。
③最上階・南向き高層階の日射負荷
最上階の住戸は、屋上のコンクリートから直接熱が伝わるため、他の階より2〜3℃室温が高くなることも珍しくありません。
また、南向きの中高層階はカーテンなしで日中を過ごすと、室温が外気温より高くなるケースもあります。
「風通しがいいから涼しいはず」「マンションの角部屋は快適」という思い込みが、実は熱中症の入口になっていることもあります。
室内熱中症の兆候|見逃してはいけないサイン

熱中症は「屋外で起きるもの」というイメージが強いですが、
近年は発症場所として「住居内」が最も多いことが総務省消防庁のデータで示されています(2024年時点)。
近年は発症場所として「住居内」が最も多いことが総務省消防庁のデータで示されています(2024年時点)。
マンション住まいで見逃してはいけないサインを、重症度別に整理します。
| 重症度 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| Ⅰ度(軽症) | めまい・立ちくらみ、大量の発汗、筋肉のこむら返り | 涼しい場所へ移動、水分・塩分補給 |
| Ⅱ度(中等症) | 頭痛、吐き気、体のだるさ、集中力低下 | 自力で水分がとれなければ医療機関へ |
| Ⅲ度(重症) | 意識障害、けいれん、高体温、呼びかけへの反応が鈍い | ただちに救急要請(119番) |
特に注意したいのは、Ⅱ度からⅢ度への進行が短時間で起こる点です。
「少し休めば治るだろう」と様子を見ているうちに悪化することが多いため、Ⅰ度の症状が出た時点で室温・湿度を下げる行動をとることが大切です。
「少し休めば治るだろう」と様子を見ているうちに悪化することが多いため、Ⅰ度の症状が出た時点で室温・湿度を下げる行動をとることが大切です。
エアコンをつけるべき室温・湿度の基準

「エアコンは何度からつければいいの?」という疑問に対する、公的機関の目安を整理します。
環境省の熱中症予防情報サイトが用いる指標はWBGT(暑さ指数)で、次のように区分されています。
| WBGT値 | 注意レベル | 室内での目安 |
|---|---|---|
| 21未満 | ほぼ安全 | 換気と扇風機で対応可 |
| 21〜25 | 注意 | 状況に応じてエアコン検討 |
| 25〜28 | 警戒 | エアコン稼働推奨 |
| 28〜31 | 厳重警戒 | エアコン必須 |
| 31以上 | 危険 | 外出を控え、冷房を強化 |
家庭で測るのが難しい場合は、シンプルに「室温28℃・湿度70%を超えたらエアコンをつける」を目安にしてください。
湿度が高いと汗が蒸発せず、体温調節がうまくいきません。温度だけでなく湿度も同じくらい重要なのです。
「28℃設定にしたのに涼しくならない」という声も多いのですが、これは設定温度と実際の室温が違うため。温度計を置いて、実際の室温を確認する習慣をつけましょう。
建築の視点で選ぶ、遮熱・断熱の実践アドバイス

エアコンを効かせるためにも、まずは「熱を室内に入れない工夫」を先にすることが電気代節約にもつながります。
賃貸・分譲どちらでも取り入れやすい方法を、優先度の高い順に紹介します。
賃貸・分譲どちらでも取り入れやすい方法を、優先度の高い順に紹介します。
窓の遮熱|熱の70%は窓から入る
夏場、住まいに侵入する熱の約7割は窓からと言われています。
逆に言えば、窓対策をするだけで室温上昇を大きく抑えられるということ。
逆に言えば、窓対策をするだけで室温上昇を大きく抑えられるということ。
- 遮熱・遮光カーテン:日中閉めておくだけで室温を数℃下げる効果
- UVカット・遮熱フィルム:貼るタイプは賃貸でも導入しやすい
- すだれ・外付けシェード:窓の外側で日射を遮ることが最も効果的
特に外付けシェードは、窓ガラスに熱が届く前に遮断できるため、室内カーテンより効果が高いのが特徴です。
断熱シートで壁・窓の熱侵入を減らす
ホームセンターで手に入る窓ガラス用の断熱シートは、賃貸でも貼るだけで施工できます。
「冬用」と思われがちですが、実は夏の遮熱にも有効です。
「冬用」と思われがちですが、実は夏の遮熱にも有効です。
気泡入りの断熱シートは、窓ガラスからの熱伝導を抑え、エアコンで冷やした空気を逃がしにくくしてくれます。
サーキュレーターで空気を循環させる
エアコンの冷気は下に溜まりやすい性質があります。
サーキュレーターを天井付近に向けて回すと、部屋全体の温度を均一にでき、設定温度を1〜2℃上げても快適さが保たれます。
サーキュレーターを天井付近に向けて回すと、部屋全体の温度を均一にでき、設定温度を1〜2℃上げても快適さが保たれます。
エアコンの反対側の壁にサーキュレーターを置き、天井や上方向に風を送るのが基本です。
夜間の「熱抜き通風」を活用する
マンションはコンクリートが蓄熱するため、夜間に外気温が下がったタイミングで短時間だけ窓を開ける「熱抜き通風」が有効です。
目安は外気温が室温より2〜3℃低くなる、23時前後〜早朝。
目安は外気温が室温より2〜3℃低くなる、23時前後〜早朝。
ただし、防犯上の理由で開けっぱなしにはできませんし、住戸によっては通風が難しいこともあります。無理はせず、エアコン併用を基本にしてください。
高齢のご家族を守る|親世代のためのマンション熱中症対策

高齢のご家族と離れて暮らしている方にとって、夏場の一番の心配ごとは「親がエアコンを使ってくれない」ではないでしょうか。
高齢者は加齢によって暑さや喉の渇きを感じにくくなるため、若い世代よりも室内熱中症のリスクが高まります。
厚生労働省の統計でも、熱中症による救急搬送者の約半数が65歳以上です(2023年時点)。
厚生労働省の統計でも、熱中症による救急搬送者の約半数が65歳以上です(2023年時点)。
「見える化」で暑さを実感してもらう
- 大きな文字の温湿度計を目の届く場所に置く
- 危険域で光る・鳴るタイプの熱中症計も市販されている
- エアコンのリモコンを手の届きやすい場所に定位置化する
「見えないもの」を意識するのは難しいので、温度・湿度を目に入る形にすることがまず第一歩です。
離れて暮らす場合の見守り
スマート家電を活用すれば、離れた場所から実家のエアコンをオンにしたり、室温を把握することができます。
スマートリモコンや室温センサーは1万円以下から導入でき、Wi-Fi環境があれば設置は比較的簡単です。
スマートリモコンや室温センサーは1万円以下から導入でき、Wi-Fi環境があれば設置は比較的簡単です。
「電気代がもったいない」と親御さんが我慢しているケースは、想像以上に多いです。家族から「つけていて大丈夫」と伝えることが、何よりの安心材料になります。
エアコン購入・買い替えに使える補助金・支援制度

「そろそろエアコンを買い替えたい」「実家にもう1台つけたい」というときに、
自治体の補助金制度が使えるケースがあります(2026年7月時点)。
自治体の補助金制度が使えるケースがあります(2026年7月時点)。
代表的なものを整理します。
- 東京都:高齢者世帯向けエアコン購入費補助(要件あり・上限額あり)
- 各市区町村の独自制度:非課税世帯・高齢者単身世帯向けが中心
- 国の省エネ家電買い替え支援:省エネ性能の高いエアコンへの買い替えが対象
制度は年度ごとに変わるため、必ずお住まいの自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。
あわせて、エアコン補助金2026年版の詳細記事もご参照ください。
あわせて、エアコン補助金2026年版の詳細記事もご参照ください。
2027年の冷媒規制も知っておくと安心
2027年以降、フロン規制の関係で新冷媒への切り替えが進みます。
買い替えのタイミングとしては、補助金が充実している2026年内が狙い目という見方もあります。
詳しくはエアコン2027年問題の解説記事をご覧ください。
買い替えのタイミングとしては、補助金が充実している2026年内が狙い目という見方もあります。
詳しくはエアコン2027年問題の解説記事をご覧ください。
よくある質問(マンション室内熱中症Q&A)

Q1. エアコンを1日中つけっぱなしにしても大丈夫ですか?
基本的には問題ありません。
むしろ、暑くなってから冷やすより、一定温度をキープする方が電気代が抑えられるケースもあります。
特に外気温が高い日中は、こまめにオンオフする方が消費電力が増えることも。
むしろ、暑くなってから冷やすより、一定温度をキープする方が電気代が抑えられるケースもあります。
特に外気温が高い日中は、こまめにオンオフする方が消費電力が増えることも。
Q2. 扇風機だけでは熱中症を防げませんか?
扇風機は室温を下げる機能はありません。
室温が30℃を超える環境で扇風機だけを使うと、逆に体から水分を奪って脱水を進めてしまうこともあります。
気温が高い日はエアコンとの併用が原則です。
室温が30℃を超える環境で扇風機だけを使うと、逆に体から水分を奪って脱水を進めてしまうこともあります。
気温が高い日はエアコンとの併用が原則です。
Q3. 窓を開けて風を通せば十分ではないですか?
外気温がそもそも高い日は、換気しても暑い空気を取り込むだけで室温は下がりません。
外気温が室温より低い夕方以降・早朝に短時間の換気を行い、
日中はエアコンで室温をコントロールするのが基本です。
外気温が室温より低い夕方以降・早朝に短時間の換気を行い、
日中はエアコンで室温をコントロールするのが基本です。
Q4. 電気代が心配で我慢してしまいます
近年のエアコンは省エネ性能が大きく向上しており、10年前の機種と比較すると年間電気代が半分近くになるケースもあります。
「電気代を抑えたい」と思う方こそ、まずは窓の遮熱対策とサーキュレーターとの併用を試してみてください。
「電気代を抑えたい」と思う方こそ、まずは窓の遮熱対策とサーキュレーターとの併用を試してみてください。
7月の電気代の考え方については、エアコンの電気代を抑える7月の実践術で詳しく解説します。
まとめ|今日からできる、マンションの熱中症対策

最後に、記事の要点を整理します。
- マンションはコンクリート蓄熱・気密性・日射負荷で戸建てより熱がこもる
- 目安は室温28℃以下・湿度70%以下。WBGT28以上でエアコン必須
- 熱中症のⅠ度症状が出た時点で、迷わず涼しい環境へ
- 窓の遮熱を優先すれば、エアコン効率も電気代もよくなる
- サーキュレーターとの併用で快適さと省エネを両立
- 高齢のご家族には温湿度計の「見える化」と声かけを
- 自治体のエアコン購入補助や2027年の冷媒切り替えも視野に
関連する記事もあわせてご覧ください。
夏本番、マンションの室内という一番安心できるはずの場所で、熱中症になってしまってはもったいないですよね。
今日からできる小さな対策を積み重ねて、ご家族みんなが涼しく安全に過ごせる夏にしていきましょう。
今日からできる小さな対策を積み重ねて、ご家族みんなが涼しく安全に過ごせる夏にしていきましょう。
