マンションの漏水は誰の責任?配管の区分と費用負担のルール

マンションの天井にできた水漏れのしみ 生活
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天井にうっすらとしたシミ。壁紙のふくらみ。
ある朝それに気づいたとき、頭に浮かぶのは「これ、誰が直すことになるんだろう」ではないでしょうか。
結論からお伝えします。
分譲マンションの漏水で費用を誰が負担するかは、「どこから漏れたか」だけで決まります。
被害を受けた場所ではありません。水が漏れ出した場所です。
そして、その判断の物差しになるのが管理規約。
とくに配管が「専有部分」か「共用部分」か——ここが分かれ目になります。
この記事では、国土交通省のマンション標準管理規約をもとに、
負担の考え方と、実際に漏水が起きたときの動き方を整理しました。
※内容は2026年8月時点のものです。

大原則|負担するのは「漏れた場所」の持ち主

まず全体像を押さえておきましょう。
漏れた場所 原則として負担する人
共用部分(建物みんなのもの) 管理組合
専有部分(その住戸のもの) その住戸の区分所有者
マンション標準管理規約の第21条第1項には、「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする」と定められています。
裏を返せば、専有部分は自分で管理し、自分で直すのが原則ということ。
上の階から水が落ちてきた場合も同じです。
上階の専有部分から漏れたなら上階の方の負担、共用部分から漏れたなら管理組合の負担になります。

では、配管はどちらなのか

縦管と横引き管の区分

漏水の原因でいちばん多いのが配管です。そしてここが、いちばんややこしいところ。

標準管理規約の考え方

標準管理規約の第7条第3項には、こう書かれています。

専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする
出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第7条第3項

ひとことで言えば、「その住戸だけが使う設備で、共用部分の中にないもの」は専有部分ということ。
条文につけられた国の解説では、専有部分にあたるかどうかは「設備機能に着目して決定する」とされています。
つまり「誰のために使われている配管か」で判断するわけです。

これを配管に当てはめると

配管の種類 一般的な扱い 理由
縦管(本管)
上下階を貫く太い管
共用部分 建物全体の住戸が使うため
横引き管(枝管)
縦管から各住戸へ分かれる管
専有部分 その住戸だけが使うため
床下を通っている自分の住戸用の配管は、多くの場合「専有部分」です。
床下=建物の一部というイメージがあるので、ここは意外に感じる方が多いところ。
ただし、これはあくまで標準管理規約をもとにした一般的な考え方です。
実際の区分は、お住まいのマンションの管理規約で確認する必要があります。

「専有部分だから全額自己負担」とは限りません

管理組合と区分所有者の負担の分かれ目

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
標準管理規約の第7条につけられた国の解説には、こんな一文があります。

この区分は必ずしも費用の負担関係と連動するものではない
出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第7条 コメント

「専有部分=必ず自己負担」ではないと、国が明言しているのです。

管理組合が一体で管理できる場合がある

標準管理規約の第21条第2項には、こう定められています。

専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の保存行為等(中略)を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、総会の決議を経て、管理組合がこれを行うことができる

出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第21条第2項

そして国の解説では、この第2項の対象となる設備として「配管、配線等」が名指しされています。
つまり、専有部分の配管であっても、総会の決議を経れば、管理組合が一体で工事できる余地があるということ。
実際に、大規模修繕で全戸の配管をまとめて更新するマンションは少なくありません。

ただし「清掃」と「取替え」は扱いが違います

ここは正確に押さえておきたいところです。国の解説には、こう書かれています。
工事の種類 費用の扱い
配管の清掃等 管理費を充当することが可能
配管の取替え等 専有部分に係るものは各区分所有者が実費に応じて負担すべき
高圧洗浄のような清掃は管理費でまかなえる。
でも配管そのものを交換する費用は、専有部分の分は自分持ち——という整理です。
「うちのマンションは配管清掃を管理組合がやってくれるから、取替えもやってくれるはず」
この思い込みは、外れることがあります。

漏水が起きたときの動き方

漏水に気づいたときの手順

負担の話は、原因が分からないと始まりません。
まずやるべきことは「止める」「記録する」「知らせる」の3つです。
  1. 水を止める(自分の住戸が原因なら、元栓や止水栓を閉める)
  2. 写真と動画を撮る(日付が残る形で。天井・壁・床・家財すべて)
  3. 管理会社に連絡する(管理組合への第一報になります)
  4. 上下階が関わる場合は管理会社を通して連絡してもらう
  5. 原因調査を依頼する(どこから漏れたかの特定が最優先)

当事者同士で直接話をしないほうがいい理由

上の階の方と直接やりとりしたくなる気持ちは、よく分かります。
ただ、原因が特定される前の話し合いは、こじれやすいのが実情です。
まだ誰の責任か分からない段階で「弁償してください」という話になると、後から原因が共用部分だと判明したときに気まずさだけが残ります。
管理会社という第三者を必ず間に入れる。
これは、住み続けるうえでの人間関係を守るためでもあります。

保険が使える場合があります

自分の住戸から漏れて階下に被害を与えてしまった場合、個人賠償責任保険という仕組みが使えることがあります。火災保険の特約として付いていることが多いものです。
また、マンション全体でかけている保険に、同様の補償が含まれている場合もあります。
加入状況と補償の範囲は、契約によってまったく異なります。
ご自身の保険証券を確認するか、保険会社・管理会社にお問い合わせください。
※本記事は保険の助言をするものではありません。

賃貸の場合は考え方が変わります

ここまでは分譲マンションの話でした。賃貸の場合は、そもそも建物の持ち主が大家さんなので、話の構造が違います。
原因 原則として負担する人
建物や設備の老朽化・不具合 貸主(大家さん)
借主の使い方が原因(洗濯機のホース外れ、水の出しっぱなし等) 借主
階下への被害 原因を作った側が賠償責任を負う
民法では、賃貸物件の修繕は原則として貸主の義務とされています。
配管の劣化のように借主に落ち度がない原因なら、借主が費用を負担することはありません。
ただし気づいたのに放置した場合は話が別です。
被害が広がった分について、責任を問われる可能性があります。
賃貸で漏水に気づいたら、まず管理会社へ。そして連絡した記録を残す。
これは結露のときとまったく同じ考え方です。

まとめ

管理規約を確認する

  • 負担は「漏れた場所」で決まる。被害を受けた場所ではない
  • 縦管は共用部分/横引き管は専有部分が一般的な考え方
  • 床下の自分用の配管は、多くの場合「専有部分」
  • ただし国は「区分は必ずしも費用の負担関係と連動しない」としている
  • 専有部分の配管でも、管理組合が一体で管理できる余地がある(第21条第2項)
  • 清掃は管理費でまかなえるが、取替えは専有部分の分が自己負担
  • 起きたら止める・撮る・管理会社に知らせる。直接交渉はしない
  • 実際の区分はお住まいの管理規約が正
漏水は、金額が大きくなりやすく、しかも人間関係まで巻き込む厄介なトラブルです。
ただ、判断の物差しは管理規約という形で、きちんと文書になっています。
「どこから漏れたか」さえ押さえておけば、話し合いは驚くほど整理して進められます。
できれば何も起きないうちに、一度ご自身の管理規約を開いてみてください。
配管の区分がどう書かれているか。それを知っているだけで、いざというときの安心感がまるで違います。

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※本記事は国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年10月改正版)およびその同コメントの内容をもとに作成しています。標準管理規約は国が示すモデルであり、実際の規約はマンションごとに異なります。個別の事案については、お住まいの管理規約をご確認のうえ、管理会社や専門家にご相談ください。