ハザードマップの見方|浸水の深さと3種類の水害を読み解く

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スマートフォンで地図を確認する 生活

「ハザードマップは見たことがあるけれど、色を見ただけでよく分からなかった」
そんな方は少なくないと思います。
結論からお伝えすると、ハザードマップで確認すべきは「浸水の深さ」と「その水がどこから来るのか」の2つです。
同じ青色でも、川の氾濫による浸水と、排水が追いつかない浸水では、備え方がまったく違います。
この記事では、地図の見方、色と数字の意味、そしてマンションだから安心とは限らない理由まで、建築と不動産の実務経験をもとに整理しました。

まずはここで見る|2つの公式サイト

2種類のハザードマップの入口

ハザードマップは、国と自治体の2種類の入口があります。
名称 特徴
重ねるハザードマップ
(国土交通省)
住所を入れるだけで、洪水・土砂災害・津波などを地図上に重ねて表示できる
わがまちハザードマップ
(国土交通省)
市区町村が作った詳しい地図へのリンク集。避難所の位置まで載っている
使い分けは単純で、まず「重ねる」で全体像をつかみ、次に「わがまち」で自分の街の詳細を見る——この順番が分かりやすいです。
どちらも無料で、アプリのインストールも不要。スマートフォンからも見られます。

色の意味|浸水の「深さ」を読み取る

浸水の深さと建物の階数の対応

ハザードマップの青色は、濃くなるほど深く浸水する想定です。
数字の意味を、建物の高さに置き換えてみましょう。
浸水の深さ 建物でいうと 想定される状況
0.5m未満 大人のひざ下 歩行が難しくなり始める
0.5〜3.0m 1階が水没する高さ 2階への避難が必要
3.0〜5.0m 2階の床上まで 3階以上への避難が必要
5.0m以上 3階の床上まで 広域避難の検討が必要
意外に見落とされがちなのが「0.5m未満」の危険性です。
大人でも、水深が50cmを超えると流れの中では歩けなくなるとされています。「膝下なら大丈夫」と外に出るのが、もっとも危ない判断です。

同じ青でも中身が違う|3種類の浸水

洪水・内水氾濫・高潮の違い

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
浸水の想定には、原因の違う3つの種類があります。

①洪水(外水氾濫)

川の水があふれる、または堤防が決壊して起こる浸水です。
川からの距離と、その川の規模が影響します。水の勢いが強く、浸水も深くなりやすいのが特徴。

②内水氾濫(ないすいはんらん)

大雨で下水道や排水路の処理が追いつかず、街の中に水があふれる現象です。
川から離れていても起こります。近年の局地的な豪雨で増えており、都市部のマンション街でも無縁ではありません
浸水の深さは洪水より浅いことが多いものの、地下駐車場や半地下の玄関には水が集まりやすいため、被害が出やすい場所があります。

③高潮

台風などで海面が異常に上昇し、海沿いの土地が浸水するものです。
海に近い地域では、洪水とは別に確認しておく必要があります。
ハザードマップは種類ごとに別々の地図になっています。「洪水のマップだけ見て安心」は危険で、少なくとも洪水と内水の2つは確認しておきたいところです。

水害以外も確認を|土砂災害と地盤

斜面と地盤のリスク

ハザードマップは水害だけではありません。
特に確認しておきたいのが、次の3つです。

土砂災害警戒区域(イエロー)と特別警戒区域(レッド)

斜面の近くでは、2種類の区域が指定されていることがあります。
この2つは意味の重さがまったく違います
区域 意味 建物への影響
土砂災害警戒区域
(通称イエロー)
土砂災害のおそれがある区域 建築の制限はない
土砂災害特別警戒区域
(通称レッド)
建物が損壊し、住民に危害が生じるおそれがある区域 建築に構造上の制限がかかる
レッドゾーンでは、土砂の力に耐える構造にすることが求められるため、建て替えや増築の際に費用が上がることがあります
また、不動産取引ではこの区域内であることの説明が義務づけられています。
斜面のそばの物件を検討している場合は、イエローかレッドかを必ず確認してください。同じ「警戒区域」という言葉でも、資産価値や工事費に関わる差があります。

液状化のしやすさ

埋立地や、昔は川・沼だった土地では、地震の揺れで地盤が液体のようになる液状化が起こることがあります。
建物が傾く、水道管が壊れる、駐車場が沈むといった被害につながります。
多くの自治体が「液状化危険度マップ」を公開しています。建物が新しくても、地盤の性質は変わりませんので、土地の履歴として確認しておく価値があります。

揺れやすさ

同じ地震でも、地盤が軟らかい場所ほど揺れが大きくなります
「揺れやすさマップ」で自宅の位置を見ておくと、家具固定にどれだけ力を入れるべきかの判断材料になります。

マンションなら安心?建物側から見た注意点

マンションの電気設備と給水ポンプの位置

「うちは5階だから浸水しても大丈夫」——半分は正しく、半分は見落としがあります。

住戸は無事でも、建物の機能が止まる

マンションの電気設備(受変電設備)や給水ポンプは、1階や地下に設置されていることが多いのが実情です。
ここが浸水すると、上層階の住戸が無事でも次のことが起こります。
  • エレベーターが停止する:高層階ほど生活への影響が大きくなります
  • 断水する:ポンプで各階に水を送る方式の場合、停電=断水です
  • 復旧に時間がかかる:設備の交換が必要になると、数週間かかることもあります
停電と断水の関係については、マンションの台風対策の記事で給水方式ごとに詳しく整理しています。

確認しておきたい2点

  • 電気設備の位置:管理組合や管理会社に「受変電設備はどこにあるか」を聞いてみてください
  • 地下・半地下の駐車場:浸水想定区域にある場合、車の避難ルールが決まっているか確認を

住まい探しでも使えます|重要事項説明の話

契約前の説明を受ける

不動産取引の場面でも、ハザードマップは正式な確認事項になっています。
2020年8月から、宅地建物取引業者は水害ハザードマップにおける物件の位置を、重要事項説明で説明することが義務づけられました(2026年8月時点)。
つまり、購入や賃貸の契約前には必ず説明を受けられるということです。
ただし、説明されるのは「水害」に関する部分。土砂災害や地震の揺れやすさは別に確認する必要があります。
物件を探している段階なら、内見に行く前に住所でハザードマップを見ておくと、現地で見るべきポイントが変わります。周囲より土地が低くないか、近くに水路がないか——気にする目が育ちます。

色がついている場所は、避けるべき?

よく聞かれる質問ですが、色がついている=住んではいけない、ということではありません
日本は国土の多くが平野部に集中しており、利便性の高い街ほど川の近くに発達してきたという歴史があります。都市部で「まったく色がつかない土地」を求めると、選択肢は大きく狭まります。
大切なのは、リスクを知ったうえで、それに合った建物と備え方を選ぶこと
浸水想定3mの地域なら3階以上の住戸を選ぶ、在宅避難できるよう備蓄を厚くする——といった判断ができれば、十分に住みこなせます。
逆にいちばん危ういのは、知らないまま住んでいて、当日に初めて気づくという状態です。

見た後にやっておきたい3つのこと

避難ルートを歩いて確認する

  1. 避難所までのルートを実際に歩いてみる:地図上では近くても、途中に低い土地やアンダーパスがあると通れません。晴れた日に一度歩いておくと安心です
  2. 家族で「どうするか」を決めておく:浸水想定が浅い地域なら在宅避難、深い地域なら早めの立ち退き避難——自宅の想定に合わせた方針を決めておきます
  3. 備蓄と家具固定を見直す:在宅避難を選ぶなら、水と食料、そして家具の固定が前提になります
家具の固定については家具の転倒防止の記事で、防犯を含めた留守中の備えはお盆の帰省前の防犯対策の記事でまとめています。

まとめ|「深さ」と「水の出どころ」を確認する

家族で備えを話し合う

最後に、この記事のポイントを整理します。
  • まず「重ねるハザードマップ」で全体像、次に「わがまちハザードマップ」で詳細を見る
  • 色は浸水の深さ。3.0mで2階の床上、5.0mで3階の床上が目安
  • 0.5m未満でも歩行は困難。「膝下なら大丈夫」は危険な判断
  • 浸水には洪水・内水氾濫・高潮の3種類。地図は別々なので複数確認を
  • マンションは電気設備や給水ポンプが1階・地下にあることが多く、住戸が無事でも生活が止まる
  • 不動産取引では水害ハザードマップの説明が義務(2020年8月〜)。ただし土砂災害等は別途確認
  • 見たあとは避難ルートを歩く・方針を決める・備蓄を見直す
ハザードマップは、不安になるために見るものではありません。
「自分の家はどう備えればいいか」を決めるための道具です。
5分あれば確認できますので、防災の日をきっかけに一度開いてみてはいかがでしょうか。

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